LIMA >>> NAZCA 29 / MAY *SAT*



13時過ぎ、再びオルメーニョのターミナル。ナスカ行きのバスは待機しているが乗車は出発直前までできず、待合室で待つ。ロイヤルクラスの乗客は奥のVIP待合室が使用できることを出発10分前になって知り移動してみると、やたらめったらきれいで明るく、バーカウンターまであってテーブルとチェアもお洒落なカフェ風。何もここまで気合入れなくっても、バスのクラスごときでここまで差をつけなくっても、って感じ。白人の旅行者数人と、日本人の女の子2人組もいて、彼女らはチリの歩き方を広げている。バスのトランクには大きな預け荷物が次々に積み込まれる。

階下は乗務員のスペースとトイレ、コーヒースタンド。2階に上がったとたん、何とも言えないヘンな臭いがして慌てて酔い止めを飲む。
「うわ〜っ、気持ちワルう!! 何やろ?この臭い」
しかしそんな、ナンプラーと香水を混ぜたみたいな臭いも、鼻が慣れただけか、バスが走り出して空調がきき始めたのか5分もたてば忘れてしまう。

革張りの大きなシートはクッションもしっかりしていて、飛行機のビジネスシートみたい
いちばん前にはくつろぎスペースまで


最前列席の我々のためにありき、みたいなブレイクコーナー(?)に
「この無駄なスペース!」
ほんとー!帰り、席なしで全然いいから乗せて欲しいよね!」
「立席乗車券売ってくれんかなぁ」
「ここでいいから乗せろって訴える?」(←やりかねない。かなり本気)
と不安を紛らわせるかのようにギャアギャア言いながら、スーパーで買った総菜を広げて昼食。自分で買っておきながら「なんだろー、これ!」

スーパーで買ったもの

パン、総菜、チョコレート
ミネラルウォーター、インカコーラ
プラスチックのスプーンなどなど
全部で18.6ソル(600円)
◆ LUNCH ◆

↑左上から時計回りに

・プリン ★ 甘すぎ&巣がたってる
・チキンのテリーヌみたいなの ★★
ちょっぴりスパイスが効いている
・チキンの照り焼き ★★★★
豚角煮みたいな味付けでいちばん美味かった!
・ジャガイモ、りんご、豆、紫とうもろこしのサラダ
★★★★
・インカコーラ(←) ★★ 甘い微炭酸
ちょっと抜けたファンタレモンみたいなパンチのない味

出発時、座席は半分以上空いていて、市内の別のターミナルでさらに客を拾うもまだ空席あり。15分か20分くらい街中を走っていたバスはやがてパン・アメリカン・ハイウェイと思われる広い高速道路に出、一直線に彼方に伸びるそれをひたすら南下し始める。バスから外を見ているだけで、リマも貧富の差が激しそうなところだと感じる。

郊外の赤土の丘には
中途半端に崩した斜面に
強引に家を建てたような
スラムみたいな地区が広がっている

最初は車内には穏やかな音楽が流れていたが、やがて映画(見たことあるようでタイトル思い出せない)上映が始まり、頭上から
ジャック・ニコルソンの怒鳴り声。スピーカーは運悪く我々の真上にあり、それも大音量


3、40分走ればもうこんな風景
ナスカまでほっとんど変わらない

食後、時差、退屈な景色、昨日の移動の疲れ、今朝のバスチケットを巡る奔走・・・でとても起きていられない
睡魔なのに
映画の騒音きつい冷房3重苦。耳栓をペペさん家のトランクに置いてきてしまった私はティシュペーパーを丸めて耳に詰め込み、Mちゃんは
「も〜〜!うるさい!!ジャック!!!

それでも1、2時間爆睡していたようで
突然乗務員の兄ちゃんに
サンドイッチを渡され目が覚める

兄ちゃんは飲み物のオーダー(といってもコーヒー、インカコーラ、ペプシ、コカ茶のみ)も聞いてまわり、せわしなく何度も上と下を行ったり来たりして全員にサンドイッチと飲み物を配る。そんな彼に、レム睡眠の底辺な時に起こされ重くてしょうがないまぶたを無理矢理開いて
「もうちょっとボリューム下げてくんない?!」
と思いっきり不機嫌&ブサイクな顔で苦情言ってみる。映画はいつの間にかジャック・ニコルソンのは終わっていて、しかし今度は日本人も出てくる潜水艦が舞台みたいなの。相変わらずやかましく、苦情言ってもたいしてボリュームは下がらない・・・。食べる気も起きるはずなくサンドイッチは足元に置いて再び眠る。

途中小さな町でもかなり頻繁に停まって、その都度荷物を積んだり、当然人の乗り降りもある。5時頃、リマを出てからいちばん大きな町、(たぶん)ピスコで10分くらい停まってたかな。

葬儀の列に遭遇しました
バスは路肩に寄って一時停車

楽団が陽気なマーチみたいなのを
演奏して列を先導
人々の歩調を見ていると
4歩くらい進んでは1歩下がってる
何か決まりあるみたい

ピスコといえば、ペルーならではのお酒の名前でもある。ブドウを発酵させて作る蒸留酒で、強度たるやアルコール45度。ロックの他、レモン汁、卵白、シロップを混ぜてピスコ・サワーというカクテルで飲むのもメジャーだが、そんなお酒との関連や名前の由来について、歩き方は全く触れていない。前述の
『INSIGHT GUIDES PERU』によれば、この辺り(海岸砂漠地域)で採れるブドウからピスコが製造されているとのこと。

これがピスコのストレート
高地ではアルコール控え目にした方がいいので
(高山病を悪化させます)
なかなかトライできずにいましたが
後日プーノで飲みました

あまりのキツさにミネラルウォーターで水割りに
(割れば辛口白ワインみたいでした)

ピスコからさらに南へ80kmのイカという町に7時頃到着。砂漠の中のオアシスでイカ県の県庁所在地ということだが、暗くて何も見えないのもあるが、な〜んもなさそう。郊外の砂丘の上にあるリゾートホテル‘Hotel Las Dunas’に停まり、白人の宿泊客を数人降ろす。デラックスホテルというわりにはエコノミーで(歩き方によるとS/US$61、W/$72)地味そうだが、このホテルからはナスカへダイレクトに遊覧フライトもある(2時間でUS$143なので、リマから飛ぶよりはずっとお安いですね)。しかし我々はそこからさらに2時間、140km先のナスカまで、砂漠をどこまでもまっすぐ伸びるパン・アメリカン・ハイウェイをひたすら南下する。2本の映画上映が終わっても相変わらず大音量でBGMは流れていたように思うが、その後は眠くて眠くてひとときも目を開けていられなかった。ナスカに着くまで全く記憶がない。

本当に7時間ちょうどかかって、9時ぴったりにナスカ。シートは立派で座り心地は良かったけれど、寒さと訴えるに値するほどの、ジャックニコルソンのものすごいやかましさに快眠を著しく妨害されたお陰で、非常に疲れたバス旅だった。乗務員の兄ちゃんが「ナスカに着いたよ!」と客を起こしてまわり、目をこすりながらバスを降りる。ナスカにはバスターミナルの建物がないようで、単に道端に寄せているだけだが、降りるとそこには迎えの男たちが数人並んでいた。客とホテルの名前を書いたプラカードを持っている者もいれば、ただつっ立ってるだけの奴も。‘Alegria’と書いたのを持っていたか、そこに私の名も書いていたか、それとも何も持っていなかったかは忘れたが、1人のおじさんにおかぽんかと声をかけられる。おお、ちゃんと迎えが来てるじゃないの。
ナスカの Hotel Alegria にも日本出発直前にメールで予約をしていた。29日は、リマからのバスでだいたい夜8時頃に着くよ、と打ったら来た返信がコレ。

> We have the Alegria Hotel Double with Bathroom and...
> ...You comes in Royal Class Bus from Lima on May 29th,
> but What time your bus departs from Lima?
> This is in order to wait for you at the bus stop to transfar you
> to Alegria Hotel. OK?
ビジネスライクでない感じ、ちゃんと迎えに来てくれる意思があるんだと思わせるでしょ? バスの出発時間は怪しいながらたぶん1時半だろうと日本出発前に伝えておいたが、ぺぺさんもこの日、わざわざホテルに「日本人の女2人が行くから迎えを頼む」と連絡入れてくれてたそう。同じく予約を入れていた英国人の老夫婦とともに、トラックとジープとトラクターを合体させたような、やたらめったら車高が高くて幅の広い(横に4人は並んで座れる!)、サファリツアーか砂漠疾走用に作られました、みたいなごっつい車に乗せられる。戦車みたいな。ところが、何この車〜!!とあっけにとられているうちにホテル到着。ほんの2ブロック、3分・・・。荷物が多いとありがたいけど、200mを送迎するにはどう考えても大袈裟すぎ。

小さなホテルだが、レセプションにはこの時間にも数人客がいて何か手続きをしている。迎えに来てくれたおじさんは「先に部屋を見なさい」と鍵を取って案内してくれる。レセプションの奥は食堂兼簡易カフェって感じで、もう営業時間は終わっているようだが飲み物やヨーグルトなどは販売している。バックパックを横に置いたバックパッカーが7、8人、薄暗い中TVの音だけが響くその食堂で、ただテーブルについてボーっとしている。みんな無言・無表情で怖い。夜行バスを待ってるのだろうか? 中庭にはプールがあり、ハンモックやデッキチェアで寒いのに暗いのに、白人が何か食べながら書き物をしたり本を読んだりと、客は多そうだが活気はあまり感じられない不思議なホテル。

通された2階の部屋は
シャワールームが広くベッドも悪くなく、TVつきでこぎれい
これで2人で$25は安い

チェックインを済ませて明日のナスカのフライトを、と言いかけると、おじさんにすぐ隣のオフィスに連れて行かれる。アレグリーアホテルにはツアー会社アレグリーアが併設してるのだ。なにせこれが便利、リマから夜到着する我々みたいな客に合わせて夜10時頃まで営業しているから、ツアーだって予約なしでも大丈夫。
ホテルを予約した際のメールに、

> Also we have our airline offering flight over the Nazca Lines 40 dollars
> the standart flight over the Nazca Lines 35’,
> also we have the extended fligh over the lines Nazca & Palpa Lines
> one hour on the plane 75 dollars.
> Also we have land tours by land to the lines,aqueducts
> pre Inca cemeterys, adventure as sand boarding,down hill biking,etc.
> Waiting by your soon answer.
> E.mail:
info@alegriatoursperu.com
と‘そんでもって’を繰り返すツアーの案内も書いてきていたが(誤字はそのまんまにしてます)、このやり取りは出発2日前とか。なので“ナスカのフライトはお願いするつもりだけど、行ってから決めます、もう明日日本を出発するのでこれ以後返信できません!”と送っていた。
おじさんが奥に声をかけると、西田敏行の甥っ子みたいな男が出てきた。
「明日午前中の、ナスカのフライト予約お願いします。」
「マニャーナ? その後の予定は? 明日もここに泊まる?リマに帰る?それともアレキパに行くのかい?」
「それそれ、実は
すごく困ってるのよぉ!リマに帰るのにバスのチケット取れてないんだわ。明日のロイヤルクラスが満席で・・・」
「満席だって?そんなことはない、大丈夫さ。」
「??」
さらりと言い流す西田甥に、私はまた勝手なこと言いやがって・・・と不信度200%の顔をしていたのだろう。彼はそんな私の反応に大きい鼻の穴をヒクヒクさせて苦笑いしながら
「本当だよ、大丈夫さ、問題ない。
リマで満席でもここでは買えるんだよ」。
エジプトの後遺症=海外・人間不信症がいまだしっかり潜伏している私は、そうヘラヘラ軽く笑って言われるとより信じられなくなってしまう。
「なにそれ、どういうこと?! 
ホント?!
「Yeah〜」
ホントぉ〜???(しっつこく念を押してしまう)
リマで発券する座席数とナスカのそれに割り当てがあるのかどうか、本当のところは不明だが、あれだけリマで奔走して振られたのは何だったのかと狐につままれた気分になる。実はこれも後で聞いた話、ぺぺさんが「帰りのバスのチケット何とかしておくように」とお願いしてくれていたようなのだ。いずれにせよ、口でそう言われるだけでは納得できず
「バスのチケットもここで買えるの?先払いにしといていい?」
と証拠書類となるものを要求してしまう。西田甥はカウンターで立ち話もなんだから・・・とでも言いたげに
「オーケー、あっちのデスクで明日のプランを立てよう」

いまや文化遺産級の木造の小学校にある教卓、みたいな傷だらけの、しかしいい具合に色が染みてつやが出た木の机に場所を移し、西田甥が差し出したナスカと周辺遺跡の写真ファイルを見る。ミラドールという地上絵の観察やぐら、ミイラや頭蓋骨ゴロゴロの墓地跡、郊外の丘の斜面にあるパレドネス遺跡、プレ・インカ時代の水路、アントニニ博物館などが列挙されているが、写真はかろうじて白黒でないものの20年くらいたってそうに褪せているし、ピントもいまいちで最悪。Mちゃんは後ろに貼っている‘Sand Boarding’(メールにもあった砂丘すべり、オーストラリアのピナクルズとかでもやってるんだっけ)のポスターを見て騒ぎ出す。
「あれやりたいー!すっごい楽しそう!!ねえ、聞いてー!」
しかし西田甥の冷たいひとこと「あれは遠いよ、ここからだとまる1日かかるぜ」に3秒で断念・・・(ナスカからの砂丘すべりアドベンチャーツアーは所要14時間だそうです)。結局ミラドール、墓地、パレドネス遺跡をまわって地上絵フライトの空港まで、英語ガイド兼運転手つきプライベートツアーを手配してもらう。ツアーは朝7時から4時間、2人で$40。相場がわからなかったので西田甥のスペシャルプライス、な〜んて言うまま払ったけれど、あとで思えばボられたかも? 地上絵セスナ観光は11時から35分の最も短いコースで1人$40、さらに明日のリマまでのバス代1人70ソル(2200円)を一気に払い、旅の初めにして大出費にややも不安になる。
「これで明日1日遊べると思ったら高くないのかな?」
西田甥はまわる場所とセスナの時間、バスの時間などを手書きで記入し複写のバウチャーを作る。書きながら時計に目をやりながら
「君たち独身? おお、そりゃいいことだ。晩ご飯食べてないだろ? これから食べに行こうよ、ここは10時に閉めるからあと5分だ。」
と我々のナンパをはじめる。正確に言うとMちゃんを気に入った様子で、私が隣でまたか(?)と呆れ顔で相手にしないにも関わらず
「え〜、ディスコ行こうよ〜」
と少々しつこい。せいぜいディスコでもっと暇そうな女見つけなさい、と説教したくなりつつ、お金を払ってバウチャーをもらったら
「ありがと〜、ほな明日朝7時にこの場所にいたらいいのね、
おやすみー!
とさっさとオフィスを後にする。

長時間のバス移動で相当疲れているのに、明日の朝も早いのに、なんとなくこのまますぐホテルの部屋におさまるのも気がすまず、ホテルの前の通りをちょっとウロついてみる。しかし、明るい方へ200mほど歩いて行ってみても開いているのは数軒のレストランだけで、売店はない。Pollo(ポジョ=チキン)+ポテト+コーラで$5と看板を出したファストフード店だけは広い店内ほぼ満席でものすごくはやっているが、他の店はガラガラ。少し小腹が空いたのを満たすのに適当なものはまるでなく、寒くもなってきてやっぱり退散。戻る途中、西田甥が向こうからやってきてちょっぴりバツが悪いが、やつが何か言う前に先手、
「また会ったね!今度こそおやすみ〜。」(苦笑)
ホテルは静かで、シャワーも熱い湯がたっぷり出る。明日は早くもこの旅前半のハイライト、地上絵! ヒッチハイクせずリマに戻れそうだし一安心、何とかなるもんですなぁ。

                                      
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