8時にお目覚め、というより8時ちょうどに、目覚まし以上にすさまじい音がペンション全体に響き渡る。
ギューン、ガガガガガガ、ドンドンドン!!
あまりの騒々しさに思わず笑ってしまう・・・家が壊れるんじゃないかと心配になる騒々しさで3階の建て増し工事が始まり、とてもじゃないが寝ていられない。我々の部屋の前には1階とまだ骨組みだけの3階へ通じる階段があり、朝から工事の人が行き来する物音や会話する声が聞こえる。顔を洗いに出ると、ぺぺさんの母親らしき方がいて挨拶する。
「おはようございます」
ものすごく優しそうで、ものすごく丁寧なおばさん。そしてリビングに行ってみると、ぺぺさんも参ったな〜という顔で起き出していた。
「おはようございま〜す」
「よく眠れましたか?」
「ええ、でも朝からすごいですね・・・」(苦笑)
「今日は特別ひどいです・・・」
明るい
リビング
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朝食は食卓にもう用意されているが
作ってすでに数時間たったと思われる
スクランブルエッグは冷え冷え
「冷たかったら
(キッチンの)電子レンジで
温めてくださいね」 |
◆ BREAKFAST ◆
スクランブルエッグ ★
‘マラクヤ’のジュース ★★★
パン
インスタントコーヒーはセルフで |
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ペペさんに名前を2度ほど聞きなおしてしまった‘マラクヤ’なる南米産の果物?のジュースはマンゴーとグアバをミックスしたみたいに濃厚で、なかなか美味い。帰国後購入した『INSIGHT GUIDES PERU』にも詳しくは書いてないものの、“ジュースにするにはベストな果物で、ペルーでは好んで飲まれる。種が多いパッションフルーツ”とある。
こちら帰国後、米国アマゾンコムで購入したペルーのガイドブック(英語)$23也
ペルー、ボリビア、エクアドル、コロンビアの4カ国で1冊にされている強引な『歩き方』よりぶ厚くて重い
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旅に持ってくには
不向きですが
写真が多くてきれい
内容・質ともに
よろし
旅ではもちろん
ペルー・ボリビア両国
インカ時代と遺跡
アンデスのこと
などなど |
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膨大なコト・モノを知ることができましたが
行って見て新たに感じた疑問もあまりに多く
復習・研究に熟読中
現地ガイド曰く
実際のところよくわかっていないことだらけ
要するにインカ文明は
謎のまた謎だらけなのですが・・・ |
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ペペさんは今日も朝からNHKを見ているし、次にリビングに上がってきた彼のお父さんもごく普通の日本のお父さんって感じで日本語で歓迎してくれるしで、すんごい遠回りしてきただけで実は日本の僻地か離島なんじゃねえか、と思ってしまう。
昨夜、明日は午前中別のお客さんをツアーに案内するのでいないかもしれない、その時は何か用があれば母親に、と言っていたペペさんだが、我々が出発するまでは宿にいたから先に2日分の宿代と空港への送迎費を払っておく。今日はナスカに行き1泊するが、明後日またここに戻ってくる。それで、「旅する花」のりんかさんもそうしていたように我々も1泊分の荷物だけ別にして、トランクはペンションに置かせてもらう。別のHPで、ナスカへのバスで盗難に遭ったという生々しい体験記を読み、ちょっとやばいぜ、とも思って。
「大きい方の荷物、1日預かってもらえますか?」
「あ〜大丈夫ですよ、置いてってください。皆さんそこに置いてます」。
そう言われて後ろを見ると、アメリカン航空のタグがついたままのトランクが置いてある。例の米国2回乗り換え、明け方4時に着く便で来たに違いない。日本からの便は深夜か夜半すぎに到着、ペルー各地への国内線は霧を避けるためか早朝に集中しているのだから、送迎だけで大変! ペペさんは(深夜・早朝の迎えに)「慣れていますから」と言うけれど、毎日が当直・日直みたいな生活だ。逆にこのスケジュールを利用し、午前4時前リマに着いた後、6時のフライトでクスコまで飛んでしまうというツアーも見うけたが(リマ滞在あとまわしのパターン)、安上がりで無駄が少ないかもしれない分、時差と高地への順応に加えて長時間移動のしわ寄せが一気にきそうな、さすがの私もしりごみするせこすぎる日程。飛行機で上がってしまうのなら一緒なのかもしれないけど、標高3400mのクスコには、リマで一息ついて心の準備っつうものをしてから入った方がいいように思い、ナスカ観光を先に持ってきた。結果的には、リマからナスカへは、飛行機ツアーで行くにしても1泊してバスで行くにしても一息ついてる場合じゃないハードさで、余計に疲れが蓄積したような気がしないでもない・・・。ペルー国内線の時刻表や往復飛行機を利用するナスカ日帰りツアーは、こちらアエロコンチネンテを参照、日本で予約できます。というわけでサブバックに貴重品と着替え、洗面用具にカメラなどを詰め込み、トランクは部屋から出してリビングの隅に。
9時半、宿を出発。前の通りを、別に意味はなく左の方に歩いてタクシーを拾う気持ちの準備と、朝のリマの雰囲気と様子を偵察する。セントロをはじめ治安の悪い地区もあるようだが、ペペさんが「人類考古学博物館まで歩いて行けます」と言うのだからこの辺りはあまり心配ないのだろう。人通りは多くないけれど、思ったほど閑散としているわけでもなく、小さな商店はそろそろ営業を始めようかとシャッターを半分上げかけている。様子をうかがいながら路地を50m行く間にも、そんなに大きな道路でもないのにタクシーはわりとひっきりなしに通り、我々の姿を見つけてはスピードを落としたり、声をかけてく奴もいる。流しのタクシーがたくさんいる場合、基本的に向こうから声かけてくる奴には捕まらないという理念に従い、逆にこちらから停めるタイミングを見計らう。エジプトを旅するまではメータータクシーが当たり前、タクシーと値段交渉なんてそんな面倒くさいこといちいちしてらんねぇよ、なんて思っていたくせに、もはや何も考えず自然に交渉に進み出てしまう。こうして人間、その土地土地に適応していく?んですねえ。
「オルメーニョのバスターミナルまで、7ソル以下です」
相場が‘7ソル’というわけではなく、通常それ以下、つまり7ソルが最高値?という一言にして十分なペペさんのアドバイスを胸に、ターゲット1台目をとっ捕まえて窓越しに歩き方を広げる。ただでさえ見にくい歩き方の欄外に、3mmくらいの小ささで細々と書かれているオルメーニョという長距離バス会社の住所を指して
“クワント・クエスタ?”
ドライバーはその小さい字をなぞり目をしかめるので
“オルメーニョ、バスターミナル”
と言えばその2単語の方が通じたりする。この時から私は、過去に覚えてほのかに頭に残っているイタリア語に思いのほか苦しめられ、いつまでたってもスペイン語モードに切り替わらない柔軟性のなさに、自分でも呆れてしまうのでした。本当に、2週間ずっと。“クアント・クエスタ”(西)と言おうとしても最後まで出てくるのは“クワント・コスタ”(伊)、数字すら“ドス”(2)をわざわざ“ドゥエ”と言ってしまい、自分で「ドゥエって何語や?」と突っ込み・・・“ポル・ファボール”を“ペル・ファボーレ”とは言わなくなったけど、大混乱。
“シンコ・ソレス”
パッと数字を言われても、1から数えないととっさにはわからない我々。シンコっていくらだっけ??
「ウノ、ドス、トレス、クアトロ、シンコ・・・」
2人して指を折りながら子供みたい。
「5や!5ソルや」(5も覚えてない私らです)
“ファイブ・ソレス?”
ついつい片手を広げて、指と英語で確認してしまう。ペペさんの言う最高値よりは安いことが判明するが、でどうするよ?と2人顔を見合わせる。1台目にしてふっかけないドライバーに出会えたから、いいスタートかも。
「乗ろっか」。
リマの第一印象は‘平べったい街’。首都にしては高層マンションやビルが少なめで、のっぺりと広がる住宅街はそのほとんどが1戸建て、整然と区画整理されている。コンクリートだらけで緑は多くないかわりに、黄・緑・青・ピンク・オレンジ・グレーなど淡い色で塗り分けられた建物の壁が、寂しくてどこか無機質な雰囲気をやわらげている。バスターミナルまでは6、7kmあったろうか、たっぷり20分かかる。この距離5ソル(160円)は後で思えばカイロあたりのタクシーともほぼ同じ相場だから、乗車時要交渉国の標準的水準なのかもしれない。おっちゃんドライバーにスペイン語で何か訊ねられるがわからない。日本人だよと答えておいて、あとは彼が車を走らせながら通りの名や建物の名を言ったりするのにフンフン、へーぇと相槌打っておく。
オルメーニョ社のバスターミナルは、片道4斜線くらいの大通り沿いにある。ターミナル前にはタクシーの客引きや物売りに混じって、目的わからないけどとりあえず声をかけてくるわけのわからない奴がいっぱいいる。そんな連中の隙間をくぐり抜けてチケット売り場。肩ほどもある高さのカウンターには行き先と出発時刻、そして値段を記載した表が置いてある。
「今日ナスカへ行って明日また戻ってきたいの。往復で予約できる?」
「ロイヤルクラス?ビジネスクラス?」
「ロイヤルクラス」
「何時の?」(“ケ・オーラ”ってスペイン語で聞かれたような)
時間を聞きたいのはこっちよ、そんなに本数あるわけでもないでしょ、と思いながら時刻表の‘13:30’を指す。いろんなHPで検索したところ、オルメーニョのページは見つけられなかったが、リマ⇔ナスカはだいたい1日2、3本のようで(ロイヤルクラスは1本?)ナスカまで片道7時間。夕方発のもあるようだが、ナスカまで行く旅行者は午後1時半のを利用するしかない。ペペさんもリマ発1時半、帰りもナスカ発1時半があると教えてくれていた。
長距離バスにはランクがあり
一番上のロイヤルクラスは
男女別トイレ、TVつきの2階建てバス
(映画上映があり、逆にこれに
迷惑することになるのだが)
サンドイッチと飲み物のサービスまである
もちろん冷房も完備
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しかしカウンターの姉ちゃんは愛想よく、モニター見ながらキーボードを叩いたかと思うと自分の方に向いていたモニターをぐるっと回してこちらに向け
「どの席にする?」
みたいなことを聞く。彼女はこちらの英語は解するが、話すのはスペイン語のみ。カウンターに手をついて覗きこむと・・・どうやら、白く抜けて座席番号の残っているところがまだ空いているらしい。3分の1以上は空いてたかな。日本で長距離バスはめったに利用しないし座席指定もしたことないものだから、ちょっとびっくりする。そしてなぜか一番前が2席あいているので迷わずそこにする。
「1人セセンタ・シンコソレスね。」
セセンタ・シンコ・・・またも「それっていくら?」とぽかんとする我々に、彼女は機械が吐き出した薄くて大きいぺらぺらのチケットのミシン目を切りながら、モニター右上の数字を指す。65ソル。しかし昨日両替したのは$40だけで、ソルは130ほどしか持っていない。
「ドルで払える?」
すると彼女はモニターを戻して何か打ち込む。ドル払いだとちょうど$20。とここまでは問題なかったものの・・・
往復にしては安すぎるし帰りのことは何も聞かないし、間違いなく‘往復’と言ったのは理解されてないな、と受け取ったチケットをじっくり確認して、明日の帰りの便も今購入したいことを再び告げる。後ろに並んでいる男の姿をちょっぴり気にしながら。するとまたしばらくモニターに向かっていた姉ちゃんの、次に返してきた言葉は恐ろしいものだった。
「セニョリータ、マニャーナ(明日)1時半のは満席よ、ルーネス(月曜の)にする?」
「!!!」
満席という信じたくない事実と、2泊して明後日帰ってくるのはどうよっつう無理なことを軽く言ってのけられたのにもショックを受ける。
「キャンセル待ちできる?」
その英語が通じてるのかどうか怪しいが、姉ちゃんは無言で首を横に振る。
「他のバスは? ビジネスクラスは?」
またモニタに向かう彼女の口から、次は朗報が出てくることを期待する。快く調べてくれるが、しかし・・・明日のビジネスは、朝8時にナスカを出る便しか空いていないと言う(その言い方からすると午後便はないか、あっても満席の様子でした)。それだと行って泊まって帰ってくるだけで全く観光できないんだから意味がない。そして明後日は朝6時のフライトでクスコへ発つ予定、どうしても明日午後の便で帰ってこなければならないのだ。
「朝帰ってくるんじゃ地上絵見れないじゃん?! でも明後日朝のクスコ行きチケット買っちゃってるから、明日午後発の便に乗るしか猶予がないの。何か他に方法ない?他のバス。例えば直行がないのならナスカからイカかピスコあたりで乗り換えるのとか。ビジネスより下のクラスでもいいから。」
かなり焦りはじめて一生懸命訴える。と姉ちゃんはウン・モメントと言ってカウンターを離れ、奥の透明アクリルで仕切られたブースに走った。何台かの端末を前に座っている所長か上司らしい人物と、身を乗り出してしばらくやり取りしていたが、また走って戻ってきて首を振る。本当にどうしようもないのか? これから飛行機ツアーに変更すべき? いや、他のバス会社があるかもしれない。にしても帰りが確保できないまま行くわけにもいかない、ということは今買ったばかりのこのチケットも払い戻すべきなのか。一瞬にしてものすごくいろんなことが頭を駆け巡り、増殖して整理がつかない。Mちゃんと2人、ブツブツ言いながらも解決策が見えず、行きのチケットをつまんでぴらぴらさせたままカウンターを離れることもできない我々の非常に困った様子に、再び姉ちゃんはブースに走る。何とかなるなら何とかしてぇ。こうして10分ほどの間にも、チケット買うため我々の後ろに数人が並ぼうとするが、誰しもまだまだ時間のかかりそうな雰囲気、ハポネサ2人の立ち往生を読み取り、隣があけばそちらに移っていた。すみませんね。我々のために聞いて動いて、何とかしてくれようとする姉ちゃんの姿は頼もしいけれど、でもしょせん彼女の力ではどうにもならないようだった。
「ビジネスクラスのバスが他にもあるけれど、ここではそのチケットは買えない、セントロ(旧市街)の別のオルメーニョのターミナルに行けばわかるわ」。
スペイン語とカタコト英単語で怪しいが、彼女はそう言ってまたほんの少しの我々の望みをつなげてはくれる。
「セントロのターミナルってここからどのくらい?」
が、“How far”も通じないので言葉を変えて頑張る。
「歩いては行けないよね?タクシー?なら何分でいくらくらい?」
「タクシーで行くしかないけど、値段はわからないわ」。
「わかった、ありがとう。とりあえず行ってみるよ」。
エジプトみたくキレることはないにしても、今回も初っ端から難題が降りかかってきた。
「どうするー?帰れんって困るよねえ、リマに2日いても行きたいところないし。」
おいおい、もうナスカ行きを諦めるのが選択肢のひとつに入ってるわけ?! そんなあ〜〜!ありえない!! でもこういう時Mちゃんはいたって落ち着いてて、例え焦っていたとしても表情や態度に出さない。何でそんなに落ち着いてられんの? 焦ってもしょうがないけどさ。
「まぁなんか方法あるんじゃない? セントロ行ってみる?」
マチュピチュを見ても、地上絵を見ずには日本に帰れません! バスが無理ならこれから飛行機ツアーを申し込む覚悟、高いなんて言ってられない。でもその前に、少しでも可能性が残っているところを当たってみよう。
ターミナルの建物を出てわらわらと集まってきたタクシー客引きの中で、痩せた長身の中年男、英語ができるのが話が早く、セントロのオルメーニョ・ターミナルまで8ソル(250円)っつうからあまり交渉せずに乗ってしまう。それもいけなかったけれど、相場も確かめようがないけれど、もうひとつのターミナルまではペペさんの家から走ってきた距離の半分くらいで、10分もかからず着き、思わぬ近さに
「これ8ソルはボられた!高すぎ!4ソルでいい感じやん?!チックショー!」
と口に出したか出さなかったか、でも2人とも(たぶん)同じ気持ちで、しかし約束通り払って降りる。それでも、歩き方には新市街からセントロまで5〜8ソルってあるけれど。
車の中でドライバーに、ナスカ行きのバスを運行している他の会社知らないか、と聞いてみる。しかし彼は親切なふりして全然親切ではなく、ターミナルで客引きをしていながら実はバス会社のことをほとんど知らないようで、英語を話すくせにためになることも面白いことも言わない。そして、ターミナルに着いてみれば車を降りて我々を窓口に案内し、チケットの購入を終えるまで後ろでずっと待ち構えているのである。話は変わりますが、リマ市内の交差点にはいろんな物売りやフロントガラスの窓拭きが出没する。彼らは信号待ちで止まっている車の間を、商品やらバケツとモップやらを携え掲げて歩き、ドライバーとタクシーなら客の顔を覗きこむ。食べものはバナナやお菓子に水、タバコ。日用品、おもちゃやステッカーも。
セントロのターミナルは、建物は古いが窓口に置いてある端末は同じで、ペペさんは治安が悪いと言っていたけれど、少なくとも建物内はそれほどやばそうに感じない。ひとつしか開いていない窓口のおばちゃんに、絶対英語通じなさそう、と思いながら先程新市街のターミナルで購入したチケットを見せる。
「さっきあっちの売り場で、行きは買えたの。でも明日ナスカから帰るバス、ロイヤルは満席でビジネスのチケットはここじゃないと買えないよって言われたから来たんスけど」。
おばちゃんはやや無愛想であるが、我々の訴えは理解したようで、すぐさまキーボードを叩く。ところが
「明日1時半のロイヤルクラス?」
と、あれほどまでに取れないと言われた便を聞き返されて「???」 それがダメって言われたからここに来てんじゃん。でも取れるならもちろんそれがベストなのは言うまでもない。彼女はしばらく画面に向かい、プリンタでチケットを打ち出したから取れたのかと思いきや、空いているともいっぱいだとも言わずただセセンタ・シンコ・ソレスとだけ言い残して席を立つ。ブースも離れて階段を上がり、2階へと消えて行ってしまい、飛行機のチェックイン時に係がやたら電話をしたり席を離れればたいていオーバーブッキング、という図式が浮かぶ私。おばちゃんの様子に半ばあきらめた私は、さんざん待たされる間に別の手段を考えはじめる。2階で誰とどんなやりとりをしたのか全く想像つかないが、やっと降りてきて出た言葉は
「ソルド・アウト」
ほらやっぱり。がっかりすると同時に、ここまで来ても意味なかったじゃん、と騙されたような気分になる。
「だからビジネスクラスは?他には?乗り換えは?」
また同じようなことを聞くも聞くだけムダ、これ以上我々だけで動き回るのもムダに思え、ぺぺさんに電話で相談することにする。
すぐ横の公衆電話に近づけば、我々を乗せてきてまだ後ろで待ち構えていたタクシードライバーがそそくさと寄ってきては世話をやいてくれる。
「どこにかけるんだい?」
「リマだよ、この番号」(名刺を見せる)
すると奴はMちゃんの手からコインを取り上げ、勝手に入れて番号を押す。ペンションにかけてみると携帯に自動転送されたようで、外にいるという忙しそうなペペさんに手短に状況を話す。まずセントロは治安が悪いから早く引き揚げた方が良いと念を押され、
「2時のビジネスもないですか。もうひとつクルス・デル・スルという会社があります、(新市街の)オルメーニョから歩いて行けますよ、出たら見えるところにあります。また何かあったら連絡してください」。
心強い。実はリマ⇔ナスカ間のバスはオルメーニョ以外にCruz del Sur(クルス・デル・スル)ともうひとつCiva(シバ)という会社が運行していると歩き方にも載っていた。ターミナルの住所と電話番号の記載もあったりするが、オルメーニョですらこの調子であるから英語で電話しても困難極めそうだ。とにかく行ってみるしかない。セントロも早く離れた方がいい。にしても、さっきいた場所にトンボ返り・・・。電話を終えると近づいてきたドライバーは、我々の会話に入ろうとし広げるガイドブックを覗き込んで
「よし、クルス・デル・スルか、10ソルだ、乗りな!」
と実にうっとおしい。さっき8ソルで今度は10ソル!冗談じゃない。2人して彼を無視し、高くて5ソルまでといつの間にか決め、建物を出て流しのタクシーを拾う。待機していた連中も含めて1分くらいの間に6、7台と交渉したろうか、‘ノー’と‘シンコ・ソレス’の2単語だけで1台をまるめこむ。最初は一歩ひき気味だった(?)Mちゃんも、タクシー交渉inリマ3回目にしてその要領がつかめ楽しくなってきたのか、一歩前に出つつある。
また10分ほどで新市街の、本当にオルメーニョ・ターミナルの向かい側のクルス・デル・スル社に戻るが、こうしている間にもどんどん時間は過ぎてゆく。もう11時前。映画館のチケット売り場みたいなターミナル、望みをかけて窓口の女の子に訊ねるも、
“ノーサービス”
えええーーーっ。ナスカからピスコかイカまでだけでもないの?と聞くが、とにかく今はナスカからは全く運行していないらしい。さすがのMちゃんも焦り始めたか、すぐ電話のところへ駆け寄り受話器を上げる。公衆電話はカードと硬貨の両方が使え、市内通話は3分=0.5ソル(15円)。ところが、表示の最低金額25センティモ(8円)硬貨2枚を投入してもつながらないので(ダイヤル途中で硬貨が戻ってくる)、適当に75センティモか1ソル硬貨を入れ直して再度ペペさんを頼る。数分話して受話器を置いたMちゃんは、
「なんかね、ローカルバスがあるけどリマでは買えんって。イカかピスコで乗り換えるらしいんやけど、とにかくイカまで戻ってきたら、そこからはけっこう便あるから何とかなるだろうって。僕もいろいろ調べてみて、わかったらナスカのホテルに連絡入れておきますって言ってたよ。まあとにかく行けって感じよー。」
ローカルバス・・・人間も荷物もギュウギュウ詰めのコンビみたいな小さなバンを想像してしまい、思わずため息が出る。スペイン語もわからないのにちゃんと乗って、しかも乗り継いでリマまで戻ってこられる?? いきなりギャンブル。帰れる保証がないまま、でももう行くっきゃない。そうだ、最後はヒッチハイクしてやろうじゃんか、と開き直って
「1時半までどうする?」
バスの出発までは2時間あるが、30分前にはターミナルに戻っておきたい。でも1時間半あればミラ・フローレスの海岸だけでも行って戻ってこられるかな、と即座にまたタクシー! 海岸沿いの公園まで6ソル(190円)、15分くらい。開き直ったつもりがやっぱり不安な私は、ひたすらMちゃんをハケ口にしてたかもしれない。
「どうなるんやろ〜、帰れるんかな〜、ついにヒッチハイクの時が来たかぁ・・・」
一方のMちゃんはまだもう少しポジティブで
「こんなに(たくさん)バス走ってるのに、だったら1台くらいあってもいいことない?」
確かに、市バス・路線バスじゃなく長距離バスっぽいのがかなり目につくよね。
ちなみに、日本からだとメルカードツアーで南米往復航空券を買えばバスチケットも手配してもらえるようです(‘ペルー現地手配’を参照)。がっ、こちらも扱っているのはリマ出発便のみだったかな。
“パルケ・デル・アモル!”
運転手の兄ちゃんが指す方を見て、お金を払い、降りるスタンバイをしながら「なにここ〜?!」と声を裏返すMちゃん。
‘Parque del Amor’
恋人たちの公園
だけど行ってみれば
寄ってくるのは売り子ばっかで
アツ〜いカップルは1組くらいしかいない |
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肉付きのいい2人がちょっと苦しそうな体勢でキスしてる像が、公園のど真ん中にデーンと設置されてる。というか公園にはこれしかない。ガウディみたいなカラフルなモザイクのベンチの写真に、バルセロナのグエル公園みたいなのを期待して行ったところが大間違い。確かにモザイクのベンチはあるけれどじっくり見て楽しめる芸術品でもなく、座ってのんびり海を眺めたくなるようなロケーションでも天気でもない。歩き方の“やっぱりここは南米、発想が大胆だなあと、感じ入ってしまうモニュメントである”っつう記載にも思わずハハハとカラ笑いしてしまうような、怪しさと寂しさと虚しさ。町興しのために、金だけかけて広場に頑張って設置したが誰も足を止めないオブジェ、忘れ去られているどころか鳥のフンだらけで掃除する人もおらず逆に景観を乱しているような・・・それは言いすぎか。赤字ながら惰性で経営を続けている梅津寺パーク(ローカルな固有名詞で失礼!地方の遊園地、と言い換えておきましょう)の平日、みたいな空虚さが漂う。週末なのにこの寂しさはある意味すごい。
しかしこれは何より、すっきりしない曇天のせいだと思う。6月以降冬の間、リマにはガルーアという霧がたちこめ、雨は降らないのにどんより重苦しい天気の日が続く。今日も視界は最悪、海も空もブルーグレーでその境目もわからない。公園から海岸沿いをラルコ・マルというショッピングゾーンまで数百メートル歩いてみる。
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海岸線は意外や意外
険しい崖でした
サントリーニ、大東島・・・
断崖絶壁に囲まれた場所、島は
好きなはずなのに
ここリマだけは好きになれない
どうしてかなぁ |
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崖の下にも道路があり、海に突き出した海上レストランが見える。この曇天と寒さにもかかわらず海の中には黒い点がいっぱい・・・よく見るとサーファー!30人くらいはいたかなあ。
海岸からは中央公園の方に向かってミラ・フローレスの大通りを行くも、歩けば歩くほど虚しくなる歩道。今にも雨が降りそうで降らない空にも憂鬱になるし、我々の好奇心を刺激するような店は全くなくて退屈。あまり時間もなく、スーパーマーケットにだけ寄ることにする。
スーパーで物価の把握を兼ね
日用品と食料調達
やっぱり気になったのは総菜コーナー
豆、芋、肉、卵・・・
黄色いものばかりで緑が少ないぞ |
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ケーキは思わず撮っちゃいます
買わないけど |
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ところが、一変してスーパーの中は人もいっぱい、明るくて活気があって南米らしさというのはあまり感じないながら、海外のスーパー大好きな私の興味をひくものいっぱい! 陳列棚の一番上なんて手が届かないほど高く、カートやカゴはめちゃデカ。そのわりに棚と棚やレジの間はあまり余裕がなくてちょっとゴミゴミ。そこに風船持って大人にも子供にも愛嬌振りまく着ぐるみが、外国人の私らをハグしそうな勢いで歓迎してくれちゃったりするし、お菓子や総菜のコーナーでは日本でも土日や新商品のキャンペーンに必ず出没する試食販売促進員が
「セニョリ〜タ〜、これ絶対おすすめよぉ〜、食べてってぇ〜」
とトレーに山盛りのお菓子を差し出したりする。
「Mちゃん、もうそろそろ(ターミナルに)戻らんとヤバい!」
溢れるモノと好奇心と時間と戦いながら商品をカゴに放り込み、スーパー前で再び数台のタクシーと交渉して6ソルでオルメーニョのターミナルに戻る。
急いでるのも構わず運ちゃんは途中ガソリンスタンドに寄る。おお、客を乗せて給油するのはエジプトに引き続きペルーでも当たり前なんだ。一応給油中はエンジン停止していたのがエジプトとは違うが、運ちゃんがスタンドの男に言った数字に耳を疑う。
Mちゃん 「今、“チンクエ”(4)って言わんかった?」
おかぽん 「ウソ?! 4って、4リッターってことかな? 4ガロン(約15リットル)? それとも4ソル(130円)だろうか??」
Mちゃん 「え〜、4リットルじゃない?!」
運転席を覗くとオイルメーターはいつガス欠になってもおかしくない限りなく下をさしたままで、なんということか、エンジンを再始動しスタンドを出てもメーターはその位置から動く気配を見せないのである。スタンドの給油計器の数字はよくわからなかったけれど、やっぱどうも4リットルしか入れてないみたい。タクシーのくせに給油は客毎(?!) アンタ、原付じゃないんだから。ペルーの人に言わせりゃ、入れる時は常に満タンのおかぽんルールの方がありえねぇ、なのかな? 満タンにすると車の重量が増えるぶん燃費が悪くなるとは聞いたことあるけど、エコ・ドライブとはちょっと違うような。だいたい日本じゃ、セルフでないスタンドで1000円分もしくは10リットル未満なんて入れ方をするの恥ずかしいもんねえ。もしかしてこの国では、停めてある車からガソリンを抜き取る、ガソリン泥棒なんてのが横行してるんだろうか??なんてことまで考えちゃったりする。
Continue... |
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